前編に引き続き。
キューバの旅も終盤に。
最後の一泊は最初とは別のカサ・パラティクルに泊まった。
妻がAirbnbで予約してくれた民宿だ。
立地は良く、屋上に出て市街を見渡すこともできた。
上の写真に写り込んでいる靴の持ち主が、部屋の貸主であるアレクサンダーだった。
そう、この旅で出会った2人目のアレックスだ。
もみあげからつながるあごひげを生やした、ややでっぷりした青年は、屋上のペントハウスのようなところで住んでいた。
ニートのアレックスは自分の部屋をカサ・パラティクルとして貸すことで家から出ずに金を稼ぐ方法を思いついたのではないか。屋上の小さな小部屋で真昼間から寝そべっている彼を見て勝手に想像した。
「エアコンのリモコンはこの位置に立って押さないと反応しないんだ」
「トイレには絶対紙を流さないでくれよ」
「僕に用がある時はこのケータイを使って電話してくれ」
部屋を使用する上での注意点を矢継ぎ早に、やや一方的に説明する。さらに旧市街の巡り方について地図を見せながら説明してくれた。すでに旧市街は回ったんだと伝えたのだが、人の話を聞かないアレックスはどの客にも説明するであろう手順で説明を続けた。
翌日の早朝便でキューバを発つ予定だった我らは、観光よりも先に宿を出るべき時刻を確認しておきたかった。
「その時間帯の空港は混むから4時には出た方がいいな」
「タクシー代を値切る方法を僕が編み出したから明日の朝交渉してあげるよ」
と早朝にもかかわらず起きてくれると言う。わざわざ起きてくれるのか確認すると、
「4時5分前には起きているから大丈夫」とやる気を見せた。
果たして翌朝。4時をまわっても起きてくる気配がない彼を待つのを止めて、先に路上でタクシーを捕まえていたところにようやく起きてきたアレックス。
「タクシーを拾っちゃったの?クレイジーだ」と残念がる彼と握手して宿を後にした。
決して悪いヤツじゃないし、むしろ親切心でいろんなことを気に掛けてくれたことには感謝したい。ただ、床には埃の塊が転がっていたし、寝具にはダニがいたし、トイレは芳香剤の強烈な匂いで鼻が曲がりそうだった。
一人目のアレックスも、詐欺師にしてはカモにする額が少ないし、詐欺師じゃないとしたらただ図々しいだけでやっぱり悪いヤツに見えない。
私が「キューバ人」をイメージをする時、今後も二人のアレックスが思い出されることだろう。