Dukkha

 誰の心にも化け物がいて、その化け物は何本もの腕を持っています。慢性的な緊張の腕、他人だけでなく一番親しい人にたいしても純粋な思いやりが持てない腕、塞ぎ込んだ腕、生気がない腕など、たくさんの腕を持っています。この化け物がいない人はいません。

 私たちは化け物がいることを認めないかもしれません。否定し、抑えようとします。化け物がいないふりをしたり、隠れたり、目的や計画、地位に関心を持つことで気を紛らわせ、教養や知識を身につけるのです。

 しかし、化け物が消えることはありません。いつでも思考や認識の奥底にいて、「まだ足りない、もっと欲しい、もっとよくしなければ、もっとよくならなければ」とささやき続けるのです。これが化け物の声です。化け物は微妙にさまざまに形を変えて、ありとあらゆる場面で現れるのです。

ヴィパッサナー瞑想の教科書』より