故郷を巡る旅。
通学路を辿って母校の小学校に着いた。
門は閉じられ、「御用の方は職員室まで」とあったが、職員室には誰もいなかった。
ちょうど今年度から廃校になったからだ。
学童人口の減少により、隣町の小学校に統合されたらしい。
卒業時に観覧席の壁に書いた作品は完全に消え去っていた。
まだ廃墟になりたての母校は、使おうと思えば使えそうな鮮度だ。
運動場を裸足で走った後に足を洗った水道。
奥の高い鉄棒で、よくグライダーをして遊んだ。
背後の倉庫には、ライン引きなどが入っていた。
サッカー少年団に入って練習したグラウンド。
コーチをフェイントで交わしてシュートを決めた同級生の名前が思い出せない。
一年使われないだけで草木が伸びたプール。
モーターボートというあだ名の同級生にはいつも勝てなかったなぁ。
プールの出入り口。
水泳中に雷が鳴ったとき、皆で避難して担任の怖い話を聞いたっけ。
今の小学校にはない、腰洗い槽。
給食室。
最後の日のまま、調理器具が整理されてしまわれている。
校舎から体育館に向かう渡り廊下。
よそ見して冗談を言いながら柱に激突した同級生は元気だろうか。
中庭。
一年生は教室から中庭に直接出られて良かった。
今見るとちっぽけな段差に、当時は腰かけていたなぁ。
救助袋を取り付ける金具。
避難時の合言葉は「お・か・し」。
押さない、駆けない、しゃべらない、だっけ?
窓ガラス越しに撮影した、小学2年のときの教室。
言うことを聞かない同級生が、担任に上靴で頭を思いっきり叩かれて、涙でノートがぐしょぐしょになってたなぁ。
当時は巨大に見えたタイヤも、こうして見ると小ぶりだなぁ。
赤いタイヤの中にすっぽり身を隠せたあの頃。
母校が廃校になったことは切ないけれど、まだ間もないこの時期に訪問できたことはラッキーだったかもしれない。