先日、ちょっとした用事で文京区本郷にある東京大学を訪れた。
以前に一度だけ構内に入ったことがあるはずだが、当時の記憶はない。
興味がなければ注意は向かず、注意が向かなければ記憶には刻まれないのか。
今まさに工事中の建物もあれば、歴史的価値が高いに違いない旧建築もある。
廃屋化した旧い病棟なんかは舌なめずりしてしまうほどの魅力を放っていた。
構内の花壇の手入れも木々の剪定も実に丁寧だ。
一体どれだけの人手が緑のケアに割かれているのだろうか。
カメラ片手に構内を徘徊している間に、おそらく大学生の撮影者数人とすれ違った。
私も大学時代にもっとカメラに興味を持っていたら、母校を被写体として散策していただろうか。
正門から安田講堂に向かう並木道は威風堂々としている。
この奥、講堂の少し手前にある一対の楠の巨木を前にするとさらに圧倒される。
冒頭の写真がその枝ぶりだが、夏になれば、葉の色も深みを増してさらに重厚な印象になりそうだ。
正門脇にかき集められた落ち葉が木漏れ日に照らされて光り輝く。
柵についた飾り一つとっても、ディテールを疎かにしない建築家の心意気を感じる。
奥で咲き誇るのは赤門前の桜だが、何も聞かされなければ日本かどうかもわからない。
ゴシックだとか建築様式はよく知らないが、開校からの歴史の重みを幾度となく感じた東大構内だった。