遡ること数日前。
職場の四角い中庭に、真っ白な花を全身に纏った美しい一本の木があった。
実は、一か月ほど前から少しずつ蕾を膨らませるその木を、廊下を通るたびに見下ろしてはずっと気にしていた。
その蕾が一斉に開いたのが数日前の朝だった。
朝日に一部だけが照らされて、その白さはいっそう際立っていた。
私はカメラがないことを呪った。
職務中ながら、取りに戻ろうか迷ったほどだ。
それにしても、あの花は何というのだろう。
感動のあまり、残務で忙しそうな職場の女性に思わず尋ねた。
彼女は律儀にも、わざわざ観に行ってくれて、花水木だと教えてくれた。
以前に花水木を撮った際の記憶のせいで、花水木の花は淡いピンクだと思っていた。
この感動をどうにかして写真に収めたい。
そう思って翌日から撮る気満々でいたが、生憎の雨、曇りが続いた。
あの日のコントラストで撮りたい。
もどかしい気持ちを抱えること数日、今朝になって好機が到来した。
あの日と同じ清々しい天気。
そそくさと身支度をして、休みにもかかわらず職場に赴いた。
果たして、あの朝と同じ角度と強さの光を浴びて、花水木は満開の花を披露してくれた。