市内から徐々に、しかし着実に取り壊されていく官舎。
消滅してしまう前に、本腰を入れて記録として残しておこうと思い立った。
市のホームページにも、売却スケジュールが公表されていた。
上の地図は、リンクを貼ったページに掲載されているPDFをキャプチャーしたもの。
今日、撮りに行ったのは8, 13, 14の区域。
冒頭のタワー型の官舎は14にあった。
最初に、錆びついた外階段が出迎えてくれる。
階段には蔦が絡みつき、床面にも枯れ葉が散らばっている。
エントランスの形が独創的で美しい。
そのエントランスを上から撮るとこうなっている。
隣の屋根の水溜まり模様に芸術性を感じる。
北にも南にも官舎が建ち並ぶが、立入りが許されるのはこの建物だけ。
中階段の手すりも味わい深い。
最上階の雨樋の処理が面白い。
広大な駐車場に停まるは、たった一台の軽自動車。
再び階を下がり、手書きの「2F」が目に留まる。
植物の侵略が許されるということは、1階に住民はいないのだろう。
ゴミ集積所には、いつまでも回収されないソファがあった。
穴の開いた床下のスペース。
美しい緑色のチリトリ。
立ち入れない隣のタワー型官舎。
エントランスの天井にはめ込まれたガラス。
昭和時代を想起して懐かしい気持ちになった。
上に載せたゴミ集積所のソファを撮っていたら、年配の女性が近づいてきた。
女性「どこに住んでいる方ですか。
管理人ですが、ロケか何かですか。
怪訝な表情をされている。
私「すいません、完全に不審者ですよね。
個人的に写真を撮っているだけなんです。
近々取り壊されると思って、今のうちに記録に残したいと」
女性「ああ。
目途は経ってないですけどね。
まだ住んでらっしゃる方がいるから」
私「そうみたいですね」
女性「あっちの建物はもう誰も住んでないですけど」
私「柵があるのは、もう住んでないってことですね」
管理人さんと、そんなやりとりがあった。